沖縄への帰郷が人生を変えた──ライターへの一歩

ーーヘシキアツシさんの自己紹介をお願いします
僕は沖縄で高校卒業後、1年の浪人期間を経て京都の大学に進学しました。4年間の大学生活を経たのち法律資格を取ることを決意し、10年間さまざまなアルバイトをしながら生活と勉強を両立させていました。
最終的に京都には20年ほど住んでいたことになります。
結局、資格は取れませんでした。しかし、法律の知識や法律系の事務所で働いた経験が現在の仕事に結びついているので、この経験は貴重だったなと思います。
その後、システム系ベンチャー企業の営業、ヘッドハンティング企業の営業を経験しました。それらの企業がすべていわゆるブラック企業だったので、周りの友人からは「ブラック企業エキスパート」の称号を得ています(笑)。
そして、あることがきっかけで京都から20年振りに沖縄へ帰ってきて、現在はライターとして独立し、活動しています。
ーーすごい経歴ですね(笑)。ライターを始める「あるきっかけ」とは何ですか?
父親の介護です。
僕が京都で生活している頃、父親の病気が発覚しました。国指定の難病で、介護が必要だと母から告げられたのです。僕はひとりっ子で、母も高齢だったこともあり、僕自身が沖縄に帰って介護を手伝わなくては!と考えました。
京都から沖縄に戻り、一時期は建設会社で営業と図面作成の仕事をしていたのですが、父の状態が悪化してしまいます。
そこで考えたのが、「父のそばにいながらできる仕事はないか?」ということでした。勤めていた会社はリモート勤務ができなかったので、退職を決意しました。
そんな中「自分にできることは何だろうか?」と考えたとき、高校生の頃から文章を書くのが好きだったことを思い出します。そこで、文章を書く仕事はないかと検索したところ、ライターの仕事に辿り着きました。
今ではなんとか生活できていますが、自分でも「無謀な挑戦だったかも…」と思うことがあります。
最初の報酬〇〇円!?ライターの土台を築くまで
ーー初めてのお仕事について聞かせてください。
初めての仕事は、歴史ブログの記事の執筆でした。クラウドソーシングサイトで偶然見つけたのですが、歴史が大好きだったということですぐに応募しました。
ライターとして駆け出しの状態だったので、提案文にはとにかく「書きたい」という思いと、歴史が大好きなことを長文で書いたことを思い出します。クライアントは経験のある人を募集していたそうですが、その情熱に押し切られたと語ってくれました。
初心者の頃は案件に応募する場合、記事に対する情熱を提案文に盛り込むのも重要だなと感じた瞬間です。
ちなみに、ライターとしての初報酬は3,000文字で2,500円でした。初めて報酬をいただいた瞬間は、今でも忘れられません。
ーーなるほど、お仕事をもらうには「情熱も大事」なんですね。最初の仕事での失敗談や学んだことはありますか。
本当に申し訳ないと思っているのですが、納期を守れなかったことです。父の介護が大変だった時期があり、そちらに意識がいってしまい、納期を1週間ほど過ぎているのに連絡していないことがありました。
それに気づいて急いで連絡をし、理由を伝えたところ許してもらえましたが、あのときは本当に焦りました。そこから、スケジュール管理をしっかり行うように気をつけています。
仕事を受けた際は、真っ先にスケジュール帳を開いて納期と、いつまでに構成を考えるか、いつまでにリサーチを終えるか、いつから執筆に取りかかるかを書いています。
納期を守ることは、ライターにとって基本中の基本です。それ以降、納期に遅れたことはありません。
ーー仕事を増やしていくために工夫したことはありますか?
クラウドソーシングサイトを利用している間は、とにかく提案文を送り続けました。多いときは、1週間で50個以上の提案文を送っていたこともあります。
その際には「何が求められているのか」を意識して、丁寧に募集内容を読み込むようにしました。初心者の頃は情熱だけでも通ることがありましたが、ライターとしての経験を積み重ねていくと、情熱だけで仕事がもらえることは少なくなります。
そのため、僕は募集内容を丁寧に読み込んで、何について悩んでいるのか、何をして欲しいのかを推察し、提案文を作るようにしました。例えば、「あなたが抱えている悩みについて、僕はこのような対応が可能です」という具合です。
このような提案文を書けるようになってから、月間受注件数が1〜2件から平均15件程度まで増えるようになりました。
ーーなるほど。役に立てることを具体的に提案文に書くということですね。仕事をしていく中で意識するようになったことはありますか?
とにかく「読者にとってわかりやすいか」を意識しています。特に、僕は法律系の記事を書くことが多いので、よく専門用語が出てきます。
法律用語は一般の人にとってわかりにくいものなので、もとの意味を崩さないまま、いかにわかりやすく噛み砕くかを工夫することが大事です。
法律系の記事以外でも「この表現は伝わりにくいかな?」「こう書くと勘違いさせてしまわないかな?」と、常に読者を意識して書くようにしています。
今では、クライアントから「とてもわかりやすい内容で、読者も増えてきました」という言葉をいただけるようになりました。
ライターに必要な力は文章力ではない?これからライターになりたいあなたへ

ーーライターとして必要な力とは何だと思いますか?
たぶん、多くの人が「自分はうまい文章が書けないから、ライターなんて無理」と思っているかもしれません。でも、僕はライターとしての「力」とは、「文章力ではない」と考えています。
ライターは「聞く力」と「相手を思いやる力」が必要だ、というのが僕の考えです。
クライアントが求めていることを丁寧にくみ取るには、「聞く力」が重要になります。そして、記事を読んでくれる読者が「読んで良かった」「わかりやすかった」と満足してくれるかどうか。
「相手を思いやる力」があれば、文章力は後からついてくると思います。
ーーこれからライターになりたいと考えている人に伝えたいことはありますか?
実は僕自身、うまい文章が書けるわけではありません。5年もライターとして活動していますが、納品した記事には、今でも何箇所も修正が入って返ってくることがありますから(笑)。
それに、実を言うと僕は書くことが好きですが、得意なわけではないので。だから、ライターなんて無理だと感じている人にはこう伝えたいです。
「大丈夫。誰もがライターとしての力を持っています」
僕自身が、ライターとして特別優秀ではありません。それでも5年間、ライターとして活動することができています。だから安心してライターの世界へ一歩踏み出してみましょう。
僕はMojiギルドを通じて、僕と同じように「ライターって難しそう」と考えている誰かの背中を、そっと押せる存在になりたいと考えています。
この記事を書いたライター

ヘシキアツシ
沖縄在住のライター。司法書士事務所での実務経験を活かし、「法律」「マーケティング」「不動産」「AI」など幅広いジャンルに対応。専門的な内容を“わかりやすく、面白く”伝えることを得意とし、現在はインタビューライターとしても活動中。実...